1. はじめに
ページを開いた瞬間、コンテンツが突然ズレる──そんな違和感を覚えたことはありませんか?
それは「CLS(Cumulative Layout Shift)」という、Web表示におけるレイアウトの予期せぬ変化が原因かもしれません。
見た目の問題に見えて、実はユーザー体験やSEO評価に深く関わる構造的な課題です。
本記事では、CLSの仕組みとその影響を丁寧に紐解きながら、DevToolsによる原因特定の方法、そして具体的な改善策を設計視点から解説します。
快適で信頼される表示体験を実現するために、CLSの裏側を一緒に見ていきましょう。
2. CLS(Cumulative Layout Shift)とは?
CLS(Cumulative Layout Shift)は、ページの読み込みや操作中に発生する「レイアウトの不意なズレ」を数値化した指標です。
たとえば、次のようなケースが該当します。
- 画像や広告が後から読み込まれ、テキストが押し下げられる
- Webフォントの遅延読み込みで文字サイズが変わる
- SNS埋め込みウィジェットの読み込みによる位置変化
CLSは 0〜1の値 で評価され、0.1以下が良好、0.25以上は「不良」 とされます。
たとえLCP(Largest Contentful Paint)が0.24秒と高速でも、CLSが0.58であれば、ユーザー体験に大きな悪影響を及ぼします。
3. CLSの原因をDevToolsで特定する方法
Chrome DevToolsを使えば、どの要素がレイアウトシフトを引き起こしているかを視覚的に特定できます。
設計改善の第一歩として、原因の「見える化」は欠かせません。
3-1. 手順
- DevToolsを開き「Performance」タブを選択
- 「Record」をクリックし記録開始
- ページをリロードして動作を再現
- 記録を停止
- 「Experience → Layout Shift」を探す
- 「Summary」や「Bottom-Up」で該当要素を確認
これにより、ズレの原因となる要素とタイミングが明確になります。
このツールの使い方は、
「リッチリザルトテストの裏側を紐解く|設計精度を高める検証技術と運用ノウハウ」
でも具体的に紹介していますので、あわせて参考にしてください。
4. よくあるCLSの原因と具体的な対処法
CLSの発生には、いくつかの典型的な原因があります。
それぞれに対して、設計的な視点からの対処法を整理しておきましょう。
原因 | 対処法 |
---|---|
<img> タグにwidth/height属性がない | 明示的にサイズ指定し、読み込み前にスペースを確保する |
フォントの遅延読み込み | CSSでfont-display: swap; を指定し、文字の点滅(FOIT)を防止する |
iframeや広告ウィジェットの読み込み | 事前に高さやサイズをCSSやプレースホルダーで確保する |
レイジーロード画像の遅延展開 | CSSでaspect-ratio やmin-height を指定し、スペースを確保する |
JavaScriptでDOMを後から挿入 | 必要なスペースをあらかじめ予約し、表示切替はopacity やvisibility で行う |
これらの対策は、
「カテゴリー設計の裏側を紐解く|構造とSEOと導線を整えるために」
で取り扱っている設計思想とも密接に関連しています。
5. 実例:スクロールボタンのCLS改善ポイント
PageSpeed Insightsで指摘されるCLSの一例として、div.scroll-buttons-wrapper
内のbutton#scroll-to-bottom
が問題となるケースがあります。
実装例(CSS)
.scroll-buttons-wrapper {
position: fixed;
bottom: 80px; /* スマホではやや高め */
right: 12px;
z-index: 1100;
display: flex;
flex-direction: column;
gap: 6px;
pointer-events: none; /* 親ラッパーは操作不可 */
}
.back-to-top,
.scroll-to-bottom {
pointer-events: auto;
width: 22px;
height: 22px;
font-size: 14px;
color: rgba(0, 0, 0, 0.4);
background-color: transparent;
border: none;
border-radius: 3px;
display: flex;
align-items: center;
justify-content: center;
cursor: pointer;
transition: color 0.2s ease, background-color 0.2s ease, transform 0.15s ease;
}
@media (min-width: 769px) {
.scroll-buttons-wrapper {
bottom: 12px; /* PCでは下寄せ */
}
}
5-1. 改善ポイント
position: fixed;
で画面に固定し、レイアウトの影響を受けにくくする- ボタンのサイズを固定し、サイズ変動によるズレを防止する
- 表示・非表示切替時は
opacity
やvisibility
を使い、display: none
は避ける - ホバー時の変化は
transform
で行い、レイアウトに影響を与えないようにする
これらのUI/UX設計に関しては、
「UI/UX設計の裏側を紐解く|読者に優しいデザインとは」
でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
6. 表示切替時のCLS対策
JavaScriptで要素の表示・非表示を切り替える際、display: none
を使うとレイアウトから要素が除外されるため、CLSが発生しやすくなります。
代替手法として、スペースを確保したまま非表示にするCSS設計が有効です。
実装例(CSS)
.hidden {
opacity: 0;
pointer-events: none;
visibility: hidden;
transition: opacity 0.3s ease;
}
このように、要素の存在は維持しつつ視覚的に非表示にすることで、レイアウトのズレを防ぐことができます。
この手法は、
「内部リンク設計の裏側を紐解く|SEOと読者導線を両立する構造設計の技術」
で紹介している、読者導線を意識した設計思想とも相性が良いアプローチです。
7. CLS改善がUXとSEOに与える影響
CLSが高いと、画面が「跳ねる」ようにズレてしまい、ユーザーの操作ミスやストレスの原因になります。
これは単なる見た目の問題ではなく、体験の質そのものに関わる設計課題です。
また、CLSはGoogleのCore Web Vitalsの評価項目のひとつであり、SEOにも直結します。
たとえLCP(Largest Contentful Paint)が良好でも、CLSが悪ければ体感速度が低下し、離脱率や検索順位の低下リスクが高まります。
8. まとめ・要点整理
CLS(Cumulative Layout Shift)は、ユーザー体験に直結する重要な指標です。
見た目のズレが、操作ミスや離脱の原因となり、SEO評価にも影響を与えます。
改善のためには、以下のポイントを押さえておきましょう:
- DevToolsで原因を必ず特定することが最初の一歩
<img>
タグのサイズ指定、フォントのfont-display
、iframeの高さ確保は基本対策- JavaScriptによる表示切替は、レイアウトに影響しない方法で行う
- 固定表示UIは、位置・サイズを明示的に指定してCLSを減らす
設計視点からの改善が、快適で信頼される表示体験につながります。
9. お問い合わせ
CLS改善やパフォーマンス最適化について、さらに詳しく知りたい方へ。
設計視点からの改善提案や、WordPressでの具体的な実装支援も行っています。
お気軽に、以下のページからご相談ください。